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小規模宅地等の特例

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小規模宅地等の特例

お亡くなりになられた方やその方と生計を一にしていた親族の方が事業の用に供していた宅地や居住の用に供していた宅地は、相続人の方の生活基盤の維持に不可欠であることなどの事情を考慮して、一定の要件を満たす方が取得された場合には、一定の面積に達するまでその評価額が減額されます。この相続税の特例を、小規模宅地等の特例といいます。
このうち、居住用の宅地については、平成27年以降、330㎡までの部分について80%評価額が減額されます。
以下、相続税の申告のなかで最も利用頻度が高い居住用宅地の要件について説明して参ります。なお、平成26年以降、お亡くなりになられた方が従来から居住用として利用していた宅地ではあったものの、その方が要介護の認定などを受けて特別養護老人ホームなどの一定の施設に入所した事情があり、お亡くなりになった日において居住の用に供していなかった場合においても、入所などの後賃貸している等の事情のない限り、お亡くなりになった方の居住の用に供されている宅地であるとしてこの特例の適用を受けることができるとする改正が行われています。
この居住用宅地の特例に関する要件は簡単に説明しますと以下の通りです。
(1)お亡くなりになられた方やその方と生計を一にしていた親族の方が居住の用に供していた宅地を、お亡くなりになられた方の配偶者の方が取得された場合には、この特例の適用があります。
(2)お亡くなりになられた方が居住の用に供していた宅地を、その宅地の上にある一棟の建物(二世帯住宅でも大丈夫ですが各世帯部分がマンションのように区分登記されていないことが条件です)に居住していた方が取得され、かつその方が相続税の申告期限まで引き続きその宅地を所有して居住の用に供している場合には、この特例の適用があります。
(3)お亡くなりになられた方が居住の用に供していた宅地を、親族の方が取得した場合で、その親族の方が3年以内に自己等の持ち家に住んだことがない、お亡くなりになられた方の配偶者や同居親族がない、相続税の申告期限まで引き続きその宅地を所有している、などその他の一定の要件を満たすときには、この特例の適用があります。
(4)お亡くなりになられた方と生計を一にしていた親族の方が居住の用に供していた宅地を、その方自身が取得され、かつ相続税の申告期限まで引き続きその宅地を所有して居住の用に供している場合には、この特例の適用があります。
ここで、「居住の用に供していた」とは、宅地の上にある建物に生活の拠点を置いていたかどうかにより判断すべきものと考えられています。そしてその判断にあたっては、日常生活の状況、その建物への入居目的、その建物の構造及び設備の状況、生活の拠点となるべき他の建物の有無その他の事実を総合勘案して、社会通念に照らして客観的に判断すべきであると解されています。これではあまりにもわかりにくいので、以下具体例を見ていきます。
まず、宅地の上にある建物が、たとえば、(1)居住の用に供する建物の建築期間中だけの仮住まいである建物(2)他に生活の拠点と認められる建物がありながら、小規模宅地等の特例の適用を受けるためのみの目的その他の一時的な目的で入居した建物(3)主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で有する建物(別荘など)については、居住していた事実があったとしても、生活の拠点を置いていた建物とはいえませんので、この特例の適用はない、と考えられています(詳細は、国税庁ホームページ>質疑応答事例>相続税・贈与税>小規模宅地等の特例の対象となる「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」の判定ご参照)。一方、お亡くなりになった方が病気治療で入院し、その後お住まいであった建物に戻ることなくお亡くなりになった場合には、その建物が入院後他の用途に供されたような特段の事情のない限り、お亡くなりになった方の生活の拠点はなおその建物にあるものとしてこの特例の適用がある、と考えられています(詳細は、国税庁ホームページ>質疑応答事例>相続税・贈与税>入院により空き家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例ご参照)。また、たとえばお亡くなりになった方と長男及びその家族が同居しており、その後長男が単身赴任で同居しなくなったとしても、長男がその同居していた建物の敷地を取得し、長男の家族がお亡くなりになる直前及び相続税の申告期限まで引き続き居住の用に供している場合には、転勤という特殊事情が解消したときは長男がその家族と起居をともにすることになると認められる限り、なおその長男の生活の拠点はその宅地上にある建物にあるとして、この特例の適用がある、と考えられています(詳細は、国税庁ホームページ>質疑応答事例>相続税・贈与税>単身赴任中の相続人が取得した被相続人の居住用宅地等についての小規模宅地等の特例ご参照)。
それから、この特例の要件の中に、お亡くなりになられた方と「生計を一にしていた」という言葉が出てきます。この「生計を一にしていた」とは、どのような意味なのでしょうか。これは、『同一の生活単位に属し、相助けて共同の生活を営み、ないしは日常生活の資を共通にしている場合をいい、「生計」とは、暮らしを立てるための手立てであって、通常、日常生活の経済的側面を指すものと解される。したがって、被相続人と同居していた親族は、明らかにお互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、一般に「生計を一にしていた」ものと推認されるが、別居していた親族が「生計を一にしていた」ものとされるためには、その親族が被相続人と日常生活の資を共通にしていたことを要し、その判断は社会通念に照らして個々になされるところ、少なくとも居住費、食費、光熱費その他日常の生活に係る費用の全部又は主要な部分を共通にしていた関係にあったことを要する』と解されています(国税不服審判所平成20年6月26日裁決)。なお、同居とは、同じ家屋に起居していることをいいますが、その家屋が、いわゆる二世帯住宅などのように一棟の建物であっても構造上区分されて各部分が独立しているようなものであり、お亡くなりになった方とその二世帯住宅に住んでいるその方の親族が各人とも別の独立部分に住んでいるようなときは、同居とはいえないと解されています(租税特別措置法通達69の4-21)。
これも、このままではわかりにくいので、簡単にご説明いたします。「生計が一」とは、日常生活上のお金の面で結びつきがある、ということです。同じ建物に同居しているご家族は、居住費(家賃など)や食費、電気ガス水道料などはお互いに負担しあっているのが通常でしょうから、同居の場合、原則生計を一にしている、といえます。しかし、同居していない場合、たとえば生活費の定期的な仕送りがされているなど、日常生活上の費用を互いに負担しあっている実態が本当にあるという事実がしっかりなければ、生計を一にしているとはいえないことになります。
たとえば、農家の方に多いのが、母屋にお父様とお母様が住んでおり、離れにご長男家族が住んでいるような場合において、そのご長男家族がお住まいの離れが建っている宅地部分についてこの特例を受けようとするときは、上記のような観点から、果たしてお亡くなりになったお父様とご長男が生計を一にしていたといえるかどうかを検討していく必要があろうかと思います。

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