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死亡退職金など

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死亡退職金など

会社にお勤め中の社員の方がお亡くなりになると、勤務先の会社から以下のようなさまざまな給付があります。これらの給付につきましては、税金上意外と難しく判断に迷うことがあります。
(1)お亡くなりの日以降に支給日が到来する最後の給料
たとえば、毎月のお給料の支給日が25日で、社員の方が15日にお亡くなりになったとします。この場合、お亡くなりになった日の属する月の25日に支払われるお給料は、相続財産となります。一方、このお給料にはお亡くなりになった方に所得税はかかりません。なぜなら、相続税の課税の対象になるものには原則として所得税がかからないからです。ただ、お亡くなりになった日以降に支払われたお給料がお亡くなりになった年分の源泉徴収票における給料の支払金額に含まれている、ということがたまにあったりします。このような場合、お亡くなりになった社員の方の準確定申告(お亡くなりになった年分の所得税の申告)において、税金が納めすぎになってしまいますので、勤務先の会社に訂正を求めるなどの対応が必要となります。
(2)死亡退職金
死亡退職金は、相続税の課税の対象とされます。が、社員であった方がお亡くなりになった場合のご遺族の生活保障という見地から、相続人の方がお受取になった死亡退職金のうち「500万円×法定相続人の数」まで(たとえば相続人の方が3人の場合は500万円×3人=1,500万円)は非課税とされています。
一方、民法上、死亡退職金は、支払者である会社からご遺族の方が取得される受給権であるとして、お亡くなりになった方の遺産ではない、と考えられています。したがって、遺産分割の余地はありませんし、特段の事情のない限り受給者であるご遺族の方の特別受益にも、遺留分減殺請求の対象にもなりません。なお、死亡退職金の受給者とされるご遺族の方は、通常、支払者である会社の退職金規程等において定められています。その死亡退職金をお受取になったご遺族の方がその死亡退職金をあえて遺産分割協議に含め、他の相続人の方がその全部又は一部を取得された場合、税金上、原則としては遺産分割に名を借りた相続人間の贈与とされ、当初支払いを受けたご遺族の方に相続税が課されることになるばかりか、その遺産分割協議によって全部又は一部を取得された他の相続人の方にも贈与税が課されることになりそうです(その死亡退職金の授受が代償分割の代償金としておこなわれたものであればこのような課税はありません)。
ことろで、退職金制度は、会社によってさまざまです。退職時に一時金を支給する制度が一般的でしょうが、一時金の支払いに代えて、退職金の全部又は一部を企業年金として支払うという制度を採用している会社もあります。企業年金制度もさまざまですので一概には言えません。が、たとえば確定給付企業年金制度を採用している会社(厳密にいいますと、その企業年金を管理している団体)より死亡一時金が支払われる場合、その一時金は、相続税上死亡退職金と同様に扱われ、冒頭でご説明した死亡退職金の非課税の適用があります(相続税法施行令第1条の3、相続税法基本通達3-26及び3-27ご参照)。
では、既に会社をご退職されて企業年金を受給中の方がお亡くなりになり、その方のご遺族が引き続き企業年金を受給されることになった場合、相続税が課税されることになるのでしょうか?原則として、そのご遺族が将来にわたって受取られる年金を受給する権利を相続等により取得したものとして、その受給権を一定の方法により評価した金額に対し相続税が課税されます。この受給権は、相続税上の死亡退職金には当たりませんので、冒頭で説明したような死亡退職金の非課税の適用はありません。しかし、同じ年金であっても、厚生年金や公務員共済年金などの遺族年金の受給権は、その根拠となる法令により租税を課さないこととされているため相続税はかかりません。年金全般に言えることですが、相続税が課税されるのかどうか、更に年金の受給中には所得税がどのように課税されるのかどうか、などはその年金の種類に応じて異なりますので注意を要するところであります。
それから、お亡くなりになった方が生前に会社を退職された後に死亡し、その死亡後に支給された退職金は、死亡退職金とはいえませんから原則として冒頭でご説明した相続税の非課税の適用はありません。しかし、会社の役員の場合、その支払われるべき金額が死亡の時までに確定せず、死亡後3年以内に確定したものについては、非課税の適用があります(相続税法基本通達3-31)。
このように、死亡退職金については、税金の取扱いについて、様々な論点があります。

(3)香典や見舞金・弔慰金など
会社の社員の方がお亡くなりになりますと、ご葬儀における香典のほか、ご遺族の方に対し、見舞金や弔慰金など様々な名目で会社などからお金が支払われます。
まず、ご葬儀における香典は、お亡くなりになった方のご霊前に供えられる供物の一種ではありますが、葬儀にご参列された方のご遺族の方に対する慰め金としての性質もあろうかと思います。したがって、この香典は、もちろん相続財産とはなり得ませんので相続税が課税されることもありませんし、社会通念上の範囲内の金額であれば課税に値しないものとしてご遺族に対し所得税の課税をされることもありません。
また、お亡くなりになった方が加入されていた健康保険などから埋葬料が支給されますが、健康保険法などの根拠法令によって、税金は課さない、とされていますので、相続税も所得税も課税されません。
一方、お亡くなりになられた方の勤務先であった会社から見舞金や弔慰金などの名目でご遺族の方がお金をお受取になることがあります。これは、会社からご遺族の方が直接お受取になったものですので、ご遺族の方の固有の利得、といえなくもありません。しかし、お亡くなりになった方と会社との雇用契約等を基盤としてお受取になったものですし、会社としては死亡退職金代わりに支払うという意図もないわけではありません。税務上も、死亡退職金に関する明確な定義を設けていない以上、死亡退職金は「その名義のいかんにかかわらず実質上(お亡くなりになった方)の退職手当金等として支給される金品をいう」と解されます(相続税法基本通達3-18)ので、これらの弔慰金等は、原則として死亡退職金として扱うとしています(同通達3-20)。ですが、ご遺族に対する慰め金としての性質も否定できませんので、通常はその弔慰金等がお亡くなりになった方の普通給料の額の6か月分であれば死亡退職金とはしない、としています(同通達3-20。なお、お亡くなりになった方が業務中に死亡された場合は普通給料の3年分としています)。
では、お亡くなりになった方が既に会社を退職されており、元の勤務先であった会社からこれらの名目のお金が支払われた場合は、そのお金は果たして課税されるのかどうか?この場合、お亡くなりになった方は既に退職しておりますので、上述のような死亡退職金としての取扱いはされません。このようなお金は、その元勤務先の会社からご遺族の方がお受取になったものですので、原則としてご遺族の方の一時所得としてご遺族の方に所得税が課税されることになりそうです。

(4)団体定期保険など会社が加入し保険料を負担していた生命保険契約に基づいて従業員の遺族の方がお受取になった死亡保険金
社員の福利厚生の一環として、社員の方を被保険者とする団体定期保険などに加入してその保険料を負担している会社も中にはあります。その会社の社員の方がお亡くなりになった場合、保険会社からこの死亡保険金がご遺族の方に支払われることになります。この死亡保険金には、相続税が課されることになりますが、死亡保険金として課税されるのか、死亡退職金として課税されるのか、という課税上の問題がでてきます。どちらで課税されるかによって、相続税の納税額に影響がでてきます。たとえば、お亡くなりになられた方が自分で生命保険に加入しており、その死亡保険金がご遺族の方に支払われた上、さらに会社が加入していた上記のような生命保険に係る死亡保険金が支払われたような場合です。
死亡保険金と死亡退職金には、ご遺族の生活保障という見地から、それぞれに対し「500万円×相続人の数」までの非課税限度額があります。たとえば相続人の方が4人としますとそれぞれ2,000万円、つまり両方合わせて4,000万円の非課税限度額があることになります。そして、お亡くなりになられた方が加入していた死亡保険金が2,000万円支払われ、かつ会社が加入していた死亡保険金が2,000万円、あわせて4,000万円が支払われたとします。この場合、相続税の計算上4,000万円全部が死亡保険金とされますと、4,000万円から死亡保険金の非課税限度額2,000万円を差引いた2,000万円に対し、相続税が課税されます。一方、会社が加入していた死亡保険金2,000万円が相続税の計算上死亡退職金と扱うことができるとすれば、死亡保険金2,000万円に対する非課税限度額が2,000万円である上に、死亡退職金2,000万円に対する非課税限度額が2,000万円となりますので、結果4,000万円のすべてに相続税がかからないことになります。
会社が加入していた生命保険に係る死亡保険金であったとしても、死亡保険金は死亡保険金だから、死亡退職金と扱われる余地がないのではないか、と思われるかも知れません。しかし、会社が社員の福利厚生の一環としてこのような保険に加入しているということは、社員に万一があった場合の死亡退職金代わりになることを意図したものと考えられますし、支払いを受けたご遺族からしても実質的に会社からの死亡退職金ととらえることができるからです。この件に関しましては、相続税法基本通達で「雇用主がその従業員…のためにその者…を被保険者とする生命保険契約…に係る保険料…を負担している場合において、保険事故の発生により…当該契約に係る保険金を取得したときの取扱いは、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。ただし、雇用主が当該保険金を従業員の退職手当金等として支給することとしている場合には、(死亡退職金)に該当するものとし、この取扱いを適用しない。(1)従業員の死亡を保険事故としてその相続人その他の者が当該保険金を取得した場合 (死亡保険金に該当する)。以下省略」(カッコ内加筆)と取り扱う、としています(同通達3-17)。ただ、この「雇用主が当該保険金を従業員の退職手当金等として支給することとしている場合には、(死亡退職金)に該当する」というのは、雇用主である会社にこの死亡保険金を退職金として扱うなどの社内規程が存在するなど、死亡退職金としてみるのが相当であるような客観的事実がなければならないと解されているようです(国税不服審判所平成12年9月20日裁決ほか)ので、注意が必要です。
ちなみに、会社で加入している団体定期保険などであっても、社員の方がお給料から天引きされて保険料を負担している場合、ご自身で加入されている生命保険と同様、その保険に係る死亡保険金は相続税上も死亡保険金とされ、死亡退職金と扱われる余地はありません。

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