土地 借地権・貸宅地
お亡くなりになられた方が、建物の所有を目的として地代を払って土地を借りている場合、この借りているという権利(借地権)は相続財産となります。借地権とは、建物の所有を目的とする地上権(物権)又は土地の賃借権(債権)をいいます(借地借家法第2条第1号)。借地権のなかでも、地上権はあまり一般的でなく、また定期借地権などがありますが、以下これらを除いて話を進めて参ります。
相続税の評価上、借地権には財産価値があるものとされています。借地権は、将来的にも地代を支払っていかなければならない一方、借地借家法によって借主の権利が強固に保護されているからです。ちなみに、同じ建物の所有を目的として土地を借りているといっても、地代がゼロ又は固定資産税相当額など地代とはいえないくらい低い場合、借主の権利は借地借家法で保護されません。これは、土地の賃借というよりも、土地のただ借りだからです。こうした土地の貸し借りのことを土地の使用貸借といいます。この使用貸借に基づいて借りている土地に関する権利(使用借権)は、原則として相続財産にはなりません(民法第599条)。したがって原則相続税の課税の対象とはなりません。
逆に、建物の所有を目的として地代を受取って貸している土地(貸宅地といいます)はどのように評価されるのでしょうか。土地の貸主(地主)から見れば、いったん建物の所有を目的として土地を賃貸しますと、地代は継続して受取れるものの、借地借家法によって借主の権利が強固に保護されていますので、その土地の利用は相当制約を受けることになります。したがって、貸宅地は、お亡くなりになられた方がご自身の住まいに利用していた土地などなんら利用に制約を受けない土地(自用地といいます)に対し、借地権相当額だけ価値が減価しているといえますので、相続税の評価上、自用地より低い価額で評価されます。なお、使用貸借契約に基づいて貸している土地は、借主の権利がぜい弱なため、原則として自用地として評価した価額が相続税の評価額となります。
相続税の財産評価におきましては、借地権の価額は、原則として自用地としての土地の評価額に借地権割合を乗じて求めます。借地権割合とは、国税庁が毎年、地域ごとに借地権の売買実例・地代の額などを参考にして定めている割合です。たとえば宇都宮市は地域にもよりますが50%と定められているところが多いようです。逆に貸宅地の価額は、自用地としての評価額から、原則として上記の借地権の価額を差引いて求めます。
このほか、土地の貸し借りの相手方が法人であって、相当の地代(年額にして土地の更地価額のおおむね6%程度の高額な地代)を授受していたり、土地の貸し借りに際し税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出したりしている借地権や貸宅地の評価は、別途の取扱がありますが、ここでは説明を割愛いたします。
なお、貸宅地に関しましては、地主の方から見ますと長年地代の見直しがされていないため収益性が低かったり、土地の利用が制限されている割に相続税の評価額が高かったり、といったご不満があろうかと思われます。また、このような土地を遺産として残された相続人の方の側から見ますと、このような不満に加えて、当初の賃貸借契約書が残っていない(古くから貸している場合、往々にして残っていない場合が多いです)、借主との関係が希薄で地代の引き上げや借地契約の解消などの交渉がむずかしい、など遺産として残されてもやっかいな財産、というふうに思われるかもしれません。このような土地がある場合、是非地主の方は、生前対策の一環として貸宅地の整理(売却だけでは必ずしもありません)を進められるのもよいのではないか、と思います。