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お亡くなりになった年分の相続人の方の確定申告

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お亡くなりになった年分の相続人の方の確定申告

お亡くなりになった年分の相続人の方の確定申告の留意点

お亡くなりになった方のお亡くなりになった年分の確定申告(準確定申告)もやや特殊ですが、その年分の相続人の方の確定申告も判断に迷う点があると思いますので、以下主な留意点を列記いたしました。専門用語がたくさんでてきますので、ご不明な点はなんなりと、お気軽にご相談ください。
(1)お亡くなりになった方が事業を営んでおり相続人の方がその事業を承継した場合の税務署に対する届出など
①個人事業の開廃業等の届出書
提出期限は、1ヶ月以内です。
②青色申告承認申請書の提出期限
ア.相続人の方が従来から事業を営んでいる場合
本来、青色申告承認申請書の提出期限は、その年の3月15日までです。したがって、相続人の方がお亡くなりになった方の事業を承継したとしても相続人の方が従来から事業を営んでいる場合には、本来の期限である3月15日が提出期限です。従いまして、同日後に相続が開始しこの申請書を提出してもその年分につきましては、青色申告はできません。
イ.相続人の方が従来から事業を営んでいない場合
a.お亡くなりになった方が青色申告をしていた場合(所得税基本通達144-1)
(ア)お亡くなりになった(以下、「相続開始」といいます)日が1月1日から8月31日まで
提出期限は、相続開始の日から4ヶ月以内です。
(イ)相続開始の日が9月1日から10月31日まで
提出期限は、その年の12月31日までです。
(ウ)相続開始の日が11月1日から12月31日まで
提出期限は、翌年2月15日までです。
b.お亡くなりになった方が白色申告をしていた場合
提出期限は、原則として事業を承継した日(相続開始の日)から2ヶ月以内です。
③青色専従者給与に関する届出書
お亡くなりになった方の事業を承継した場合の提出期限の特別な取扱いはありません。したがって、原則その年3月15日まで、1月16日以降に新たに事業開始した場合や新たに専従者を有することとなった場合は、これらの日から2ヶ月以内がそれぞれ提出期限となります。
④給与の支払事務所等の開設の届出
開設のあった日から1ヶ月以内に提出します。
(2)お亡くなりになった方の事業を承継した場合の消費税
①消費税の納税義務
個人事業者の方は、通常2年前(前々年)の消費税のかかる売上高(以下、「課税売上高」といいます)が1,000万円を超えますと消費税の納税義務が生じます。
相続人の方がお亡くなりになった方の営んでいた事業を承継した場合、相続人の方が事業を営んでいなかった、又は事業を営んでいても消費税を納付したことがない(消費税の納税義務者でない)ときは、下記のとおり消費税の納税義務の判定の特例がありますので注意を要します。ただし、下記以外にも相続財産が未分割である場合や、お亡くなりになった方が複数の事業を営んでおり複数の相続人の方がお亡くなりになった方の事業を別々に相続した場合などは、別途の取扱いがありますので、専門家に判断を仰ぐのがよいと思われます。
ア.お亡くなりになった年分
お亡くなりになった方のその年の前々年(以下、「基準期間」といいます)の課税売上高が1,000万円(以下、「免税点」といいます)を超える場合
相続人の方に消費税の納税義務があります。この場合、お亡くなりになった日の翌日から年末までの相続人の方とお亡くなりになった方の課税売上高の合計額に対して消費税が課されます。
イ.お亡くなりになった年の翌年・翌々年
お亡くなりになった方の基準期間における課税売上高と相続人の方の基準期間における課税売上高の合計額が免税点を超える場合、相続人の方に消費税の納税義務があります。
②消費税の届出書の提出期限など
ア.消費税課税事業者届出書
上記①の判定により、消費税の納税義務を負うこととなった場合、速やかに提出します。この場合「相続・合併・分割等があったことにより課税事業者となる場合の付表」も合わせて提出します。
イ.消費税簡易課税制度選択届出書
事業者が納付する消費税は、原則として受取った消費税(売上に係る消費税)から支払った消費税(仕入れや経費に係る消費税)の差額です。しかし、一定の中小企業者(基準期間の課税売上高が5,000万円以下)は、売上に係る消費税のみで簡易に納付する消費税の計算をすることが認められています。この消費税の制度を簡易課税制度といいます。なお、簡易課税制度の適用を受けることができるかどうかの判定上の基準期間の課税売上高は、①の消費税の納税義務者に該当するかどうかの判断とは異なり、相続人の基準期間における課税売上高のみで判定します。
簡易課税制度により消費税を計算した場合、原則的な方法で計算した消費税よりも、納付する消費税が少なくてすむ場合があります。しかし、一回この制度を選択しますと原則2年間は継続適用となります。なので、あらかじめこの制度を選択した場合、消費税の納付額が有利なのか不利なのかの検討が必要となります。
この制度の適用を受ける場合には、原則その適用を受ける年の前年12月31日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しなければなりません。しかし、相続により事業を承継した場合、この届出書の提出期限に関する別途の規定があります。
a.相続人の方が事業を営んでいなかった場合
お亡くなりになった年の12月31日までに提出すれば簡易課税の適用を受けられます。しかし、お亡くなりになった日が12月中など12月31日までに提出できなかったことにつきやむを得ない事情がある場合には、「消費税簡易課税制度届出に係る特例承認申請書」を翌年2月末までに提出すれば、お亡くなりになった年分からこの制度の適用を受けられます(消費税法施行令第57条の2第1項及び第3項、消費税法基本通達13-1-5の2、1-4-16、1-4-17)。
b.相続人の方が事業を営んでおり上記①のア.の判定により初めて消費税の納税義務者となる場合で、お亡くなりになった方が簡易課税制度の適用を受けていた場合(消費税法第56条第1項第2号)
a.と同じです。
(3)所得の計算
①国民年金など公的年金に係る遺族年金
これらの年金に係る遺族年金は非課税です(所得税法第9条第1項第三号、所得税基本通達9-2、所得税法第35条第3項など)。一方、所得税が非課税とされる遺族年金でも、その受給権が相続財産とみなされて相続税の課税対象とされるものがありますので注意を要します。また、国民年金などに関するお亡くなりになった方の未支給年金は、その受給権のあるご遺族の方の一時所得とされます。
②死亡保険金を年金形式で受取る場合又はお亡くなりになった方の個人年金保険契約に基づく年金を受取る場合(いわゆる相続等に係る生命保険契約等に基づく年金)
相続税の課税の対象となった生命保険契約等に基づくこれらの年金に関しては、年金受給者の方の雑所得として所得税の課税対象となります。しかし、その計算は大変複雑ですので確定申告の際注意を要します。
③不動産所得・事業所得
ア.不動産の収入金額
原則として、お亡くなりになった日以降に支払期日が到来する家賃が収入金額とされます。また、不動産が未分割の場合、相続人の方の相続分に応じた家賃が収入金額とされます(財産 その他の財産 相続開始から遺産分割が行われるまでの不動産の家賃収入 をご参照)。
イ.減価償却資産の償却費
お亡くなりになった方の減価償却資産の取得時期、取得価額及び未償却残高をそのまま引き継ぎます。しかし償却方法は引き継ぎません。平成10年3月31日以前に取得した建物は選択により旧定率法で償却できましたが、すべて現在の定額法で償却することになります。また、耐用年数に付きましては、相続人の方がお亡くなりになった方から中古資産を取得したものとして、中古資産の耐用年数の見積り計算をした耐用年数を適用することは認められていません(国税不服審判所平成24年3月1日裁決)。
取得価額が20万円未満の減価償却資産を引き継いだ場合で、一括償却資産としてお亡くなりになった方の準確定申告において取得価額の3分の1を必要経費に算入しているときには、お亡くなりになった年分の必要経費算入額はゼロで、翌年以降取得価額の3分の1を必要経費に算入します(所得税基本通達49-40の3)。
ウ.固定資産税
お亡くなりになった日後に納税通知を受けた固定資産税を必要経費に算入します。また、お亡くなりになった方の準確定申告において、各納期の固定資産税をそれぞれ納期の開始の日又は実際に納付した日の必要経費に算入している場合には、相続人の方の確定申告においてお亡くなりになった日後に納期の開始した又は実際に納付した固定資産税の額を必要経費に算入できます(所得税基本通達37-6本文及び(3))。
エ.個人事業税
お亡くなりになった方の相続人の方が事業を承継された場合のみ、お亡くなりになった日後に通知を受けた個人事業税の額を必要経費に算入します。また、お亡くなりになった方の準確定申告において、各納期の個人事業税をそれぞれ納期の開始の日又は実際に納付した日の必要経費に算入している場合には、相続人の方の確定申告においてお亡くなりになった日後に納期の開始した又は実際に納付した税額を必要経費に算入できます(所得税基本通達37-6本文及び(3))。
オ.相続により取得した事業用の土地や建物の登記に要した費用
相続登記をした事業用の土地や建物の登録免許税などの登記に要した費用は、必要経費に算入します(所得税基本通達37-5、49-3)。
カ.一括評価貸金による貸倒引当金
相続人の方が事業を承継し、青色申告の承認を受けていることにより、お亡くなりになった方の準確定申告において一括評価貸金による貸倒引当金繰入額を必要経費に算入している場合には、その金額を、相続人の方のその事業に係る収入金額に算入します(所得税法施行令第147条)。
④相続された財産をお売りになった時の譲渡所得
ア.相続財産を譲渡した場合の相続税の取得費加算の特例
相続により取得した土地や建物などを相続開始の日の翌日から相続税の申告期限後3年以内に譲渡した場合、その土地や建物などについて課された相続税額として一定の方法により計算した金額を、取得費に加算して譲渡所得を計算することができます。これにより、相続した土地や建物などを譲渡した場合にかかる所得税や住民税を少なくすることができます。
イ.相続財産である非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の配当課税の特例
相続税の納税資金を確保するなどの観点から、相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡することもおこなわれたりします。この場合、通常はみなし配当課税がおこなわれ比較的高率な所得税や住民税を納付しなければならないこともあります。しかし、この日状況株式を、相続開始の日の翌日から相続税の申告期限後3年以内に発行会社に譲渡した場合、発行会社から交付を受けた譲渡代金全額が株式等による譲渡所得に係る収入金額とし、配当課税されないとする特例の適用を受けることにより、所得税や住民税の負担を緩和することができます。
(4)所得控除
①障害者控除
お亡くなりになった方の控除対象配偶者又は扶養親族でお亡くなりになった方の準確定申告において障害者控除の適用を受けている場合であっても、これらの方が同一年中において相続人の方の扶養親族にも該当するときは、その相続人の方の同年分の確定申告において、その障害者である扶養親族の方について障害者控除の適用を受けることができます(所得税基本通達79-2)。
②寡婦(寡夫)控除
年の中途において夫又は妻と死別した相続人である妻又は夫でその年において寡婦又は寡夫に該当する方については、死別した夫又は妻の準確定申告において配偶者控除の適用を受けている場合であっても、相続人である妻又は夫の同年分の確定申告において、寡婦(寡夫)控除の適用を受けることができます(所得税基本通達81-1)。
③扶養控除
お亡くなりになった方の控除対象配偶者や控除対象扶養親族でお亡くなりになった方の準確定申告において配偶者控除や扶養控除を受けている場合においても、同一の年中において相続人の方の控除対象扶養親族に該当するときは、相続人の方の同年分の確定申告において、扶養控除の適用を受けることができます(所得税基本通達83~84-1)。
(5)税額控除
①住宅ローン控除
お亡くなりになった方の相続人の方がお亡くなりになった方の住宅ローンを承継した場合であっても、その住宅ローンについて住宅ローン控除を受けることはできません。

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