負担付贈与
親子が連帯債務者となって住宅ローン(連帯債務方式の住宅ローンは住宅金融支援機構の借入に見られます)を借りて共有名義で住宅を購入したとします。そして数年後、当初借りた住宅ローンの金利が実勢の金利よりも高くなったため、子供単独名義で住宅ローンを借換えると同時に、親の共有持分を子供に贈与する、ということが行われたとします。これは、子供が親の住宅ローンの負担を引き受けることを条件に親から住宅の共有持分の贈与を受けるという内容の契約であり、負担付贈与契約と呼ばれます。
たとえば、住宅の共有持分割合及び住宅ローンの連帯債務の負担割合ともにそれぞれ2分の1ずつとし、住宅ローンの借換え直前の残高が3,000万円、贈与時の住宅(土地と家屋)の贈与時の時価が3,500万円であったとします。この場合、贈与の金額は、次のように計算されます。
住宅の贈与の金額:3,500万円×1/2=1,750万円
住宅ローンの負担の金額:3,000万円×1/2=1,500万円
贈与の金額:1,750万円-1,500万円=250万円
この負担付贈与をする場合には、税金面でいくつか注意点があります。
れは、贈与を受けた子の贈与税の申告における土地と家屋の評価額は、通常の贈与であれば土地については路線価(倍率地域は倍率評価)、家屋については固定資産税評価額によりますが、負担付贈与の場合、原則として通常の取引価額、いわゆる時価が評価額となります(相続税関係個別通達「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等又は家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」)。それから、子が毎年の年末調整や確定申告において住宅ローン控除を受けている場合、借り換えた住宅ローンのうち、親から引き受けた住宅ローンの部分に対応する金額は、住宅ローン控除の対象にはなりません。
一方、贈与をした親、つまり贈与者においては、税金上、肩代わりしてもらった住宅ローンの金額で、住宅を受贈者に売却したものとされ、これが贈与者の譲渡所得となり、所得税の確定申告が必要になってくる場合があります。
住宅ローンのこのような負担付贈与を絡めた借換えをご検討されていらっしゃる方は、これらの税金に関する検討も十分にされる必要があるかと思われます。
最後に、これは負担付贈与とは全く関係ない話ですが、上記の親子が連帯債務の住宅ローンの返済中に
親が亡くなって団体信用生命保険契約により住宅ローンの残債額の全額が完済となった場合、子において、その完済となった住宅ローンの残債額うち自己の負担部分については、生命保険会社から債務の負担が無くなったことによる利益を受けたことになります。そしてその利益額(完済直前の住宅ローンの残債額のうち子の負担部分)は、一時所得として所得税の確定申告が必要になってきます(国税不服審判所平成18年12月15日裁決ご参照)。