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贈与税の配偶者控除の利用方法

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贈与税の配偶者控除の利用方法

贈与税の配偶者控除とは、(1)婚姻期間が20年以上である夫と妻の間(配偶者相互間)で、(2)夫又は妻の一方が所有する居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭を贈与して、(3)居住用財産の贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住の用に供し、(4)その後も引き続き居住の用に供する見込みである、場合には、一定の書類を添付して贈与税の申告書を提出すれば、居住用不動産の財産の額又は金銭の額から2,000万円を差引けます、という贈与税の特例です(以下、居住用不動産を取得するための金銭の贈与を除いて説明いたします)。この贈与税の特例の趣旨は、居住用財産の贈与はたとえば夫が自分の死後も妻の生活の本拠を残してやりたいという思いから行われることが多く、そのような事情を酌んだもの、と思われます。
一方、相続税におきましては、配偶者の方が相続や遺贈によりお亡くなりになられた方や生計を一にする親族の方の居住の用に供している宅地を取得した場合、その宅地につき最大330㎡の部分につき評価額を80%減額するという特例(小規模宅地の特例)があります。さらに、配偶者は、相続された遺産額(厳密にいえば相続税の課税価格)が、1億6,000万円までなら相続税はかかりませんし、1億6,000万円を超えても法定相続分までなら相続税額はかかりません(配偶者に対する税額軽減の特例)。
では、税金の観点から、相続税の節税を図るために、生前にわざわざ登記費用や不動産取得税を支払って、贈与税の配偶者控除の特例を受けて居住用財産の贈与をする必要があるのでしょうか。この点は、下記のとおりこれらの特例の特性を考慮し、税金のシュミレーションをした上で検討を行っていくしかありません。
(1)贈与税の配偶者控除は、土地に限らず家屋も対象になります。一方、相続税の小規模宅地の特例は、土地については評価額の80%の減額が認められていますが、家屋に対しては評価の減額が認められていません。
(2)相続税の小規模宅地の特例については、居住用宅地のほか貸付事業用宅地(貸地やアパートの敷地)についても減額の特例(最大200㎡まで50%評価が減額されます)がありますが、これらの宅地について併用して特例を受ける場合、特例を受けられる面積限度の調整があります。
(3)たとえば居住用財産を有する夫について、将来相続税の申告が見込まれ、かつその妻の相続についても相続税の申告が見込まれる場合、妻に遺産の全部又はほとんどを取得させて夫の相続税の申告において配偶者の相続税額軽減の特例を活用して納付する相続税の合計をゼロまたは極力少なくしたとしても、妻の相続に関して相続税がかかるとするならば、夫の相続においてなるべく子供に遺産を分けておいたほうが、夫と妻の両方においてかかる相続税の合計額が少なくなるケースがあります。
(4)相続税や贈与税とは関係ないのですが、将来的に年をとって老人ホームに入居するため又は住み替えのため住宅を売却する、ということもあるかもしれません。その際、土地が買ったときよりも値上がりしており売却益が生じることが予想される場合には、住宅を売却したときの譲渡益に対して所得税と住民税がかかるかもしれません。ですが、住宅を売却したときは、その譲渡益から3,000万円を差引くことができるという特例(居住用財産の譲渡所得の特別控除)があります(租税特別措置法第35条)。土地と建物を夫と妻がそれぞれ共有している場合には、原則として夫婦それぞれについて3,000万円の特別控除を受けることができます。
お客様から「配偶者に住宅を贈与しても贈与税がかからないのですよね」というご相談を頂く場合がままあります。しかし、わざわざご生前に登記費用や不動産取得税(不動産取得税は贈与の場合かかりますが相続の場合かかりません)を払って贈与を行うべきかどうか、税金の面、あるいは税金以外に関する事情もよく考慮して、検討する必要があります。ご検討されているお客様がいらっしゃいましたら当事務所に是非ご相談ください。

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