住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税
時限立法ですが、父や母又は祖父母から住宅取得資金の贈与を受けた場合には、一定額まで贈与税の非課税を受けることができます(租税特別措置法第70条の2)。このような贈与につき、相続時精算課税における非課税の特例も設けられていますが、以下省略します。
この贈与税の非課税の特例を受けて住宅取得資金(あくまでお金です。住宅用の不動産自体の贈与には適用がありません。)の贈与をご検討される方は多いと思います。しかし、意外にこの特例の要件を詳しくご存知ない方が多いような気がします。この特例の要件はたくさんあります。が、意外に盲点となっている要件について以下説明いたします。
(1)お金の贈与を受けた年の翌年3月15日までに、そのお金の全額を住宅資金に充てていること
住宅を取得する際、手付金や中間金、残金と、分割してその代金の支払いを求められることがあります。この特例を受けようとお金の贈与を受けた年と、そのお金を手付金や中間金、残金の支払いに充てた年が異なる場合は要注意です。あくまで贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その贈与を受けたお金の全額を住宅購入資金に充てていることが条件です。同日までに住宅資金に充てられていなければ、この特例の適用を受けることはできません。したがいまして、贈与を受けた年の翌年3月15日までに一部充てられていない金額がある場合、この特例を受けることはできません。
(2)住宅を購入により取得する場合、お金の贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅の引渡しを受けていること
住宅を購入する際、建売住宅や新築分譲マンションは、売買契約をした時点では建築中、という場合もあるかと思います。このような場合は要注意です。あくまでも、この特例を受ける場合、お金の贈与を受けた年の翌年3月15日までにその建売住宅や分譲マンションの引渡しを受けていなければなりません(租税特別措置法通達70の2-8が準用する70の3-8)。
(3)住宅を新築する場合、お金の贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅が完成していなくても、新築に準ずる状態になっていなければならない
業者の方と請負契約を締結して住宅を新築する場合、お金の贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅が完成していなくても、新築に準ずる状態になっていなければこの特例を受けることはできません。新築に準ずる状態とは、屋根(その骨組みを含みます)を有し、土地に定着した建造物として認められる時以後の状態、とされています(租税特別措置法施行令第23条の5の2第1項)。
これでは、一体どのような状態であれば新築に準ずる状態と認められるのか、よくわかりません。この点につき国税庁は、「住宅取得等資金の贈与を受けた者が、請負契約により住宅用家屋の新築をする場合には、その贈与を受けた年の翌年3月15日現在において、その家屋がいわゆる「棟上げ」を了した以降の状態にあれば「新築」とみる」と説明しています(平成21年11月27日資産課税課情報第18号「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」(法令解釈通達)の一部改正のあらまし(情報)の租税特別措置法通達70の2-8の説明部分)。つまり、翌年3月15日までには、少なくとも上棟式が終わっていなければならないのでしょうか?いずれにしても、この「新築に準ずる状態」にあるときは、贈与税の申告書に「建築業者その他の者の…住宅用家屋が新築に準ずる状態にあることを証する書類でその工事の完了予定年月の記載がある」書類(税務署に書類が備え置かれています)を贈与税の申告書に添付する必要があります(租税特別措置法施行規則第23条の5の2第10項第1号ハ(3))。また、このような状態の場合、住宅を翌年3月15日までに居住の用に供していませんので、完成後遅滞なく居住の用に供することなどを記載した書類をあわせて提出しなければなりません(同(4))。
こうして見ていきますと、住宅取得資金としてのお金の贈与について贈与税の非課税の特例を受ける場合には、お金の支払いのタイミング(手付金や中間金、残金の支払い)と、住宅の完成のタイミングをよく考慮して、贈与を行わなければならないことがわかります。
最後に、住宅資金の贈与をした方がお亡くなりになった場合の取扱いは、どうなるのでしょうか。お亡くなりになった方から相続や遺贈により財産を取得された方については、お亡くなりになった日以前3年以内に贈与を受けた財産を相続税の課税価格に含めなければなりません。ですが、住宅取得資金の贈与を受け、この非課税の特例の適用を受けた部分は、原則除かれます。しかし、必要書類を添付し、この特例を受ける旨の贈与税の期限内申告書を提出していなければなりません。これは、お亡くなりになった年分についても同じです(租税特別措置法通達70の2-14)。