栃木県宇都宮市にある相続・企業会計・独立開業・法人成りなどに関するトータルサービスの税理士事務所

不動産や株式などの名義変更があった場合(3)親が子供の名義で買う自動車の代金を支払った場合

Home » 贈与税 » 不動産や株式などの名義変更があった場合(3)親が子供の名義で買う自動車の代金を支払った場合

不動産や株式などの名義変更があった場合(3)親が子供の名義で買う自動車の代金を支払った場合

親が子供の名義で買う自動車の代金を支払った場合、これが贈与であるとして贈与税が課されるのか、単なる親子間の金銭の貸し借りであるのか、あるいは贈与であるとしても親から子供に対する生活費の一部の負担として贈与税がかからない範ちゅう(贈与税の非課税)のものなのかは、自動車の購入の経緯、親が代金を支払った事情、購入後の状況、金銭の貸し借りとすれば契約の有無や返済の状況、などを考慮したところで総合的に判断されるのかと思われます。ですので、このような場合、贈与税が課されるのかどうかは、一概に判断し難いところです。

贈与税の課税がされた事例として、国税不服審判所平成27年9月1裁決があります。その概要は次の通りです。

子供が勤務する会社は、自動車会社と取引上の関連がありました。とある時期、子供が勤務する会社の従業員がその自動車会社の自動車を購入すると、装備品に関する10万円の割引と2万円のプリペイドカードが贈呈される、というキャンペーンがありました。その子供の親は、このキャンペーンを利用して自身の自動車を買換えようとしました。しかし、キャンペーンの特典を受けるためには、自動車の名義を従業員名義で登録しなければならない、という条件がありました。そのような理由から、親は購入した自動車を子供の名義で登録しました。自動車の代金(金額は不明)は、親の預金口座から支払いました。そして、その自動車は親の自宅において保管され、親はその自動車を利用し、自動車税や保険料なども負担していました。税務署は、自動車の名義人になった子供に対し、自動車の購入年の6年後に贈与税の課税を行いました。

以前、「贈与 不動産や株式などの名義変更があった場合(1)」でも、原則財産の名義変更があった場合には贈与税が課税される、と説明いたしました。税務署が出している通達にはそのことが明記されているからです。一方、税務署はこの通達に関する個別通達を出して、形式的な判断で贈与税が課税されることがないようにしています。これらの通達は、他の者の名義で財産を取得した場合にも適用される、としています(再掲、相続税法基本通達9-9・相続税関係個別通達「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」及び「同通達の運用について」)。つまり、たとえば親が子供の名義で財産を取得した場合、親が子供にその財産又はその財産の取得するための金銭を贈与したものとして、原則的には子供に贈与税が課税される、としています。上記の事例は、まさにこれらの通達を適用して贈与税の課税が行われたものです。

さて、国税不服審判所はどのように判断したのでしょうか。

国税不服審判所は、親がキャンペーンを利用するために子供の名義で自動車を登録したことには経済的な合理性があり、自動車の購入の前後を通じて子供が自動車の真の所有者であることを伺わせるような事情は認められない、として、税務署が行った贈与税の課税を取消しました。

税務署は、上記の個別通達にしたがって、親及び子供の年齢その他により、自動車の名義を子供名義で登録したことが過誤に基づき、又は軽率にされたものであることが認められない、と反論しました。これに対し、国税不服審判所は、個別通達に記載のある事情は贈与として扱わない場合を類型化したものに過ぎず、納税者からの反証はこれに限定されるのではない、といっています。

この事例における税務署による贈与税の課税は、あまりにも形式的で、やりすぎの感は否めません。

親が子供の買う自動車の代金を支払ってあげる、というようなことは各家庭で結構行われているものと思われます。そのとき、親子間においては贈与税が課税されることがある、ということをあまり意識せずに行われることが多いのではないか、と思います。税務署は、車のディーラーに税務調査や資料せんの提出を求めたりして自動車の販売に関する情報を入手しています。上記の事案における贈与税の課税も、そうした税務署の情報収集に基づいて行われたものと考えられます。注意が必要といえます。

お電話でのお問い合せ
無料相談フォーム