相続財産を寄付した場合の相続税の非課税
相続税の申告をお受けする中で、お客様から「遺産をどこかへ寄付したい。」というご相談を、過去何度かお受けしたことがあります。相続税の申告期限までに、相続財産を国や都道府県・市町村、一定の公益法人などに寄付した場合、その寄付した財産は相続税が非課税となります。
しかし、このような大変すばらしいご相談をお受けしても、お客様のご要望に叶った寄付先を見つけるのは、結構大変だったりもします。お客様には、お亡くなりになった方のご遺志や、お客様ご自身の過去の境遇などを踏まえて、寄付したお金がこのように使われ欲しい、というご要望があります。何とかお客様のこのすばらしい思いを実現したいと、たとえば県庁や市役所に相談をしに行きますが、なかなかそう簡単なものではありません。県とか市町村には、毎年度の予算があります。相談を受けてくださるこれらの役所の職員の方に対し、寄付の目的と金額をお示ししても、果たして県や市のほうでその目的に沿って予算を組めるのか、という問題があり、一概に快く相談に応じて頂けないことが多いのです。
しかし、ようやくお客様のご要望に叶った寄付先が見つかり、その実行の場面に立ち会うことができたときは大変感無量でした。
なお、この相続税の非課税の適用を考えるうえで注意する点があります。たとえば相続財産である預貯金で物を購入し、その物を寄付しても相続税の非課税は原則として受けられません。たとえば、お亡くなりになった方が生前お世話になった特別養護老人ホームに対し、お亡くなりになった方もよくご利用されたであろう送迎車を相続財産である預貯金をもって購入し、その送迎車自体を寄付したとしても相続税の非課税の適用は受けられません。非課税が受けられるのは、相続財産そのものの寄付であることが要件だからです。