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預貯金 名義預金

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預貯金 名義預金

今では銀行で預貯金の口座を開設することは、かなり難しくなりました。本人確認の方法以外にも、口座を作成する目的も確認され、必要性がなければ容易に口座開設に応じてくれません。
しかし、昔(私が銀行に勤めていた当時ですが…)は、預貯金の口座を開設することは比較的容易でした。私が担当しておりましたお客様がお亡くなりになり、後日ご遺族の方から「遺産の整理をしていたらこんなものが出てきた」といって、何十冊もの普通預金の通帳とその通帳の届出印と思われるご印鑑を差し出されたときは、正直困惑しました。それらのお通帳の中には、犬や猫によくある名前(たとえばタローやたまなど)のお通帳もありました。
また、こんなこともありました。個人のお客様で、お子様やお孫様名義の積立式定期預金の口座を作成し、ご自身(お父様)の普通預金の口座から自動引き落としにより毎月5万円ずつそれらのお口座に積立をされている方がいらっしゃいました。そのお客様のお話によりますと、相続税の対策として、年間60万円までなら贈与税がかからない(その当時の話です)からこのような形で子供や孫に贈与をしている、とのことでした。私は、お客様からそれらの積立式定期預金の通帳記入を依頼されていましたが、それらのお通帳はお子様やお孫様からお預かりしていたのではなく、そのお客様からお預かりしていました。それらの積立式定期預金は、お客様にお伺いしたところ、お子様やお孫様がお作りされたのではなくそのお客様ご自身がお作りになり、お通帳もお子様やお孫様が保管しているのではなくご自身で保管していらっしゃる、ということでした。
犬や猫の名前のお通帳は極端な話なのでさておき、上記のお子様やお孫様のお通帳は一体誰のものなのでしょうか。名義はお子様やお孫様なのだから、当然これらの方達のものだ、とお思いの方もいらっしゃるかと思います。しかし、一方で次のようにも言えるのではないでしょうか。お父様は、ご自身の財産(お金)を、お子様やお孫様から名義を借りて作った通帳(このような預金を名義預金といいます)に保管していただけなのでは、と。このお父様が万が一お亡くなりになり、お子様やお孫様名義の積立式定期預金の預金残高を除いて相続税の申告をし、その後万が一この相続税の申告が税務署による税務調査の対象となった場合、もしかすると税務署はこのように考えてこれらのお通帳の預金残高の申告が無いことに疑念をもつかもしれません。
ここからは、少し怖い話になります。
税務署は、人がお亡くなりになりますと、そのことをちゃんと把握します。市町村から、お亡くなりになった事実などの情報の提供を受けます。そして、所有していた不動産はどのくらいあったか、過去の確定申告の内容からその方に生前どのくらいのご収入があったのかなどを把握してゆき、相続税の申告内容と照らし合わせ申告された遺産が少なくないかどうか検討します。さらには、金融機関に照会をかけてお亡くなりになられた方や場合によっては相続税の申告書に添付されている戸籍謄本などをもとに近親者の方の預金口座の取引内容まで調べていきます。ちなみに、銀行では、お客様の口座のお取引を過去10年までさかのぼって保存しています。税務署が、これらの下調べを終たうえで相続税の申告内容に疑念があると判断すると、お客様のところに訪問して事情を聴取する、いわゆる調査を行うことになります。
例のお子様やお孫様名義の積立式定期預金の話に戻ります。かのお父様のご遺族の方が、これらの通帳の預金残高を相続財産に含めて相続税の申告をしなかったことにちゃんとした理由があれば、それは認められるかも知れません。しかし、上記のように、これらの口座を開設したのはお父様だった、印鑑もお通帳もお父様が保管されていた、お子様やお孫様がこれらの通帳の存在を知らず自由にお金を引出して自分達の入り用に使っていた形跡がない、贈与契約書を作成した形跡も無い、贈与税の申告もされていない…となれば、税務署に認めてもらうことはなかなか難しいかもしれません。実は、相続税に関する税金裁判において、このようなことで税務署と相続税の申告をされた方とが争ったケースは数多くあります。もし、お亡くなりになられた方の遺産整理の過程で、このような名義預金が出てきましたら要注意といえます。また、相続税の対策として生前に預貯金の贈与をしていこうとする場合、まずは専門家である税理士に相談されるとよいと思います。結構、周りのいろんな方のお話をお聞きになって安易になされているケースが散見されますので注意を要します。

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