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死亡保険金 受取人

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死亡保険金 受取人

ご自身がどのような内容の生命保険に加入しているか、ということを見直されていない方が多い、このことは「死亡保険金 非課税」の項目でも書きました。もしそうだとすると、せっかく相続税の非課税の限度額を考慮して生命保険に入っていることをご認識されている方でも、死亡保険金の受取人が誰か、ということを意外に見直されていない方は多いのではないのでしょうか。たとえば、死亡保険金の受取人が、奥様に偏りすぎていませんか?偏りすぎていますと、奥様がお亡くなりになった時、また相続税を納めることとなります(こうしたことも散見されます)。
少し話が変わりますが、事業を営んでいらっしゃる方につきましては、生命保険は有効な事業承継対策に利用できます。実は、死亡保険金は、他の遺産と同様に相続税が課税されますが、民法上は、お亡くなりになられた方の遺産とはされません。少し難しくなりますが、民法では、死亡保険金は受取人として指定された方の固有の財産(受取人が生命保険会社に対して有する保険金請求権)と考えられています。したがって、死亡保険金は、遺産分割の対象となりません。さらに難しくなりますが、死亡保険金の受取人が相続人の場合であっても、特段の事情がない限り、遺産分割において相続人間の公平を図るための制度である相続財産への持ち戻し(特別受益といいます)もされません。また、同じく特段の事情のない限り、相続人の最低相続分を保障する制度である遺留分侵害額の計算上の遺産にも含まれません。こうした、生命保険の性質を利用して有効な事業承継対策ができるのです。また、遺言をご検討される前に、どのような生命保険に加入しているか、死亡保険金の受取人は誰になっているのかを是非見直してみてください。生命保険は、遺言書を書くよりも簡単に、かつ確実に残したい人にお金を残すことができるのです。
ところで、死亡保険金は遺産分割の対象にはならない、とご説明しました。そうしますと、死亡保険金をお受取になった方が、あえてその死亡保険金を遺産分割の対象に含め、他の相続人の方がその保険金の全部又は一部を取得された場合、税金上、原則としては遺産分割に名を借りた相続人間の贈与とされ、当初の受取人として指定された方に相続税が課されるばかりか、その遺産分割によって保険金の全部又は一部を取得された他の相続人の方にも贈与税が課されることになりそうです(その保険金の授受が代償分割の代償金としておこなわれたものであればこのような課税はありません)。しかし、相続税法基本通達(国税庁が相続税法の解釈に関する指針として発しているもの)の中には次のような記述があります(同通達3-12【保険金受取人の実質判定】)。「保険契約上の保険金受取人以外の者が現実に保険金を取得している場合において、保険金受取人の変更の手続がなされていなかったことにつきやむを得ない事情があると認められる場合など、現実に保険金を取得した者がその保険金を取得することについて相当な理由があると認められるときは…中略…その者を…(死亡保険金の)受取人とするものとする」(カッコ内加筆)。これに従えば、受取人の変更をしなかったことにつきやむをえない事情がある場合、契約上の受取人でなく現実に死亡保険金を受取った人に対して相続税が課税され、契約上の受取人から現実の受取人に対して贈与があったものとして贈与税が課税されることはないということになります。更に、この通達に解説を加えている書籍をみてみますと、このやむをえない事情の一例としては、たとえば「夫が独身時代に夫の母を保険金受取人とする生命保険契約を締結していた場合において、保険金受取人を妻に変更しないまま夫が死亡し、それによって保険会社から支払われた保険金を夫の母が取得せず妻が実際に取得したときにおいて、その保険金は妻が受け取るべきであったとして、妻が保険金受取人として相続税の申告があったようなとき」が該当すると考えられる、と記述してあります(大蔵財務協会「相続税法基本通達逐条解説」の上記通達の解説部分)。しかし、このような例は亡き夫の母とその妻との関係が良好である場合はあり得るかもしれないとしても、良好でなければ母は妻に対して自分が受取れる保険金を渡さないでしょう。まずこのように税金以外の面でトラブルが発生するかもしれません。また、税金上、やむを得ない事情があるとしても、ケースによっては税務署が必ず認めてくれるとは限らないと思われます。
いずれにしても、生前にしっかりと受取人の見直しをしておくべきことが大切ではないかと思います。

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