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貸付金(2)

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貸付金(2)

貸付金(1)で説明しましたとおり、会社の経営者の方が会社に対して有している貸付金は、会社の業況が思わしくない場合でも、原則として相続財産とされます。これを回避するために、会社に対し一方的にその貸付金を棒引きにします、と通知(これを債権放棄といいます)をして貸付金を減らす又はゼロにする、ということをご検討されることもあろうかと思います。
しかし、債権放棄をする場合には、税金上いくつかの注意点があります。
まず、債権放棄をした場合、債権放棄を受ける会社側からみれば、借入金を返済しなくなったという利益を受けることになり、この利益に対して会社が法人税等の税金を納付しなければならないことになる可能性があります。しかし、青色申告書を提出している会社で過去の確定申告における赤字が累積している場合、単年度で利益を計上しても、その利益と税金上認められる一定期間におけるこの累積した赤字とを通算することができる制度(青色欠損金の繰越控除といいます)があるため、その累積赤字の範囲内で債権放棄を受ければ、会社において税金が生じない可能性があります。ただし、現行の税制では、資本金が1億円を超える会社等については、青色欠損金の繰越控除が一部制限されたり、留保金課税が適用されたり、法人事業税において外形標準課税が適用されていたりしています。これらの事から、一概に法人税等の税金が生じないとは言えませんので注意が必要です。
また、会社が経営者の方から債権放棄を受けたことにより、会社の債務超過が解消されて純資産がプラスになったりすると、会社の株式の財産価値が生じてきます。そうしますと、会社の経営者が債権放棄をすることによって、会社の経営者以外の株主(同族株主に限りません。)の方が間接的に利益を受けたことになります。この利益に対して、実は会社の経営者以外の株主の方に対し贈与税が課されることになる可能性があります。しかし、その会社の経営者による債権放棄が、会社が資力を喪失(法令に基づく会社更生、再生計画認可の決定、会社の整理等の法定手続による整理のほか、株主総会の決議、債権者集会の協議等により再建整備のために負債整理に入ったような場合いい、単に一時的に債務超過となっている場合は、これに該当しません)している状態で行われた場合には、債権放棄による利益のうちその会社の債務超過部分に相当する金額については、贈与税は課されない、となっています(相続税法基本通達9-3)。
もうひとつは、経営者の方がお亡くなりになる直前に会社に対し債権放棄をした場合、それが相続税の課税を意図的に回避した行為であると税務署から疑いを持たれる可能性があります(過去の税金裁判で、実際そのようなことが争われた事案があります。浦和地裁昭和56年2月25日判決)。
最後に、後からでも債権放棄をしたという事実をしっかりと証明できるよう、債権放棄をした方がしっかりとその書面に自署し、その通知をたとえば内容証明郵便で会社に送付するなどしておくことは必須であると思います。

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