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準確定申告

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準確定申告

お亡くなりになった方の準確定申告における留意点

個人の所得税は、毎年1月1日から12月31日の1年間における儲け(所得)に対して課税される税金です。しかし、年の中途にお亡くなりになりますと、1月1日からお亡くなりになった日までの間に生じた所得に対して所得税が課税されますので、その期間に係る確定申告をしなければなりません。この申告のことを準確定申告といいます。この準確定申告につきましては留意すべき点があります。以下、判断に迷いそうな点をいくつか挙げてみましたので参考にされてみてください。専門用語がたくさんでてきますので、ご不明な点はなんなりと、お気軽にご相談ください。
(1)所得の計算
①給与所得
その年1月1日からお亡くなりになった日までに支給期が到来する給与収入が給与所得にかかる収入金額とされます。従いまして、お亡くなりになった日以降に支給期が到来する給与がお亡くなりになった日以降に振り込まれた場合でも、それは給与所得に係る収入金額には含まれません(所得税基本通達9-17)。
②退職所得
お亡くなりになった方が勤務されていた会社から死亡退職金が支給された場合、その死亡退職金は退職所得とはされません(同)。
③国民年金など(公的年金等に係る雑所得)
お亡くなりになった日までに支給を受けた年金が公的年金等の雑所得に係る収入金額とされます(同)。一方、お亡くなりになった日以降に支払われる亡くなった月分までの国民年金などの年金(未支給年金)は、所定の受給者の所得(一時所得)とされます。
④不動産所得や事業所得
ア.不動産の収入金額
原則として、お亡くなりになった日までに家賃の支払期日が到来している家賃収入が、収入金額とされます。家賃はその月分を前月の末日までに支払う、という契約内容が多いです。そうしますと、たとえば、4月15日にお亡くなりになった場合、4月分の家賃は3月末日に支払われているはずです。この場合、3月末までに支払われた家賃を収入に含める一方、その4月分の家賃を15日間日割して、収入から差引くことはできません。しかし、従来から「不動産等の賃貸料に係る不動産所得の収入金額の計上時期」(個別通達直所2-78)の適用を受けて継続して前受けの経理をしているなどこの通達が定める所定の要件に該当する場合、その経理による収入金額の計算が認められます。上記の例で言いますと、3月末日に支払われた4月分の家賃のうち、1日から15日の日割家賃だけが収入金額に含まれます。
イ.減価償却資産の償却費
年間の償却費を月割り計算した金額を償却費として必要経費に算入します。また、取得価額が20万円未満の減価償却資産につき、一括償却資産として毎年取得価額の3分の1ずつを必要経費に算入している場合において、相続人が事業を承継しなかったときは未償却残高の全額を必要経費に算入しますが、相続人が事業を承継したときは、3分の1を必要経費に算入することができます(所得税基本通達49-40の3)。
ウ.固定資産税
お亡くなりになった日前に納税通知により納付すべきことが確定している固定資産税を必要経費に算入します。したがって、4月15日にお亡くなりになった場合、固定資産税の賦課決定の通知をその日前に受けていれば、原則としてその年度の固定資産税の全額を必要経費に算入することができます。また、各納期の固定資産税の税額をそれぞれ納期の開始の日又は実際に納付した日の必要経費に算入することも可能です(所得税基本通達37-6本文及び(3))。
エ.個人事業税
固定資産税と同様です。お亡くなりになった日前に納税通知を受けていない場合、事業を承継した相続人の方の必要経費に算入します。しかし、納税通知を受けていない場合で相続人の方が事業を承継せず廃業したときには、一定の方法で計算した個人事業税相当額を必要経費に算入することができます(所得税法第63条、所得税基本通達37-7)。ただし、この取扱いがあるのは、あくまでお亡くなりになった方が営んでいた事業が、事業的規模の場合です。
オ.一括評価貸金による貸倒引当金
原則お亡くなりになった年分には、一括評価貸金による貸倒引当金の繰入額は必要経費に算入できません。しかし、相続人の方が事業を承継し、かつ青色申告の承認を受けている場合には、必要経費に算入できます(所得税法第52条第2項、同法施行令第146条)。
(2)所得控除
①医療費控除・社会保険料控除など
亡くなった日までに支払った医療費や社会保険料などが対象となります。
②配偶者控除・扶養控除
お亡くなりになった方の配偶者や扶養親族の方が控除対象配偶者や扶養親族に該当するかどうかは死亡の日の現況により判定します。この場合、配偶者や扶養親族の合計所得は死亡の日の現況により見積もった金額で判定するのと同時に、年齢はあくまでその年の12月31日の時点で判定します。又、お亡くなりになった方の控除対象配偶者や控除対象扶養親族の方が、他の相続人の方の控除対象扶養親族に該当する場合でも、お亡くなりになった方・相続人の方それぞれにおいて配偶者控除や扶養控除の適用を受けることができます(所得税基本通達83~84-1)。
(3)税額控除
①住宅ローン控除
住宅ローン控除は、その年12月31日現在、対象となった住宅に引き続き居住していることが適用を受ける要件ですが、お亡くなりになった場合、お亡くなりになった日まで引き続き住宅を居住の用に供しているときは、適用が受けられます。ただし、住宅ローンに団体信用生命保険が付されていて、その保険金により住宅ローンが完済された場合、適用を受けることはできないと考えます。
(4)準確定申告書の提出期限
原則お亡くなりになったこと(以下、「相続開始」といいます)を知った日の翌日から4ヶ月以内です。この場合、申告書に「所得税の確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)」を添付します。なお、お亡くなりになった方が、前年分の確定申告をその提出期限までに提出しないで死亡した場合には、その前年分の確定申告に付きましても、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内が提出期限となります。
(5)所得税の純損失の繰戻し還付
所得税におきまして、お亡くなりになった年分及び前年分に発生した純損失(青色申告をしているこれらの各年に生じた不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額のうちそれぞれの年において損益通算しきれなかった損失)がある場合において、一定の要件に該当するときは、それぞれお亡くなりになった年の前年及び前々年分に納めた所得税の還付を受けることができます(所得税法141条)。
(6)消費税
原則相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に、消費税の準確定申告をします。この場合、申告書に「死亡した事業者の消費税及び地方消費税の確定申告明細書」を添付します。なお、お亡くなりになった方が、前年分の消費税の確定申告をその提出期限までに提出しないで死亡した場合には、その前年分の確定申告に付きましても、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内が提出期限となります。
(7)お亡くなりになった方の税務署に対する届出
①所得税
「個人事業の開廃業等届出書」(お亡くなりになった方が従業員の方を雇いお給料の支給をされていた場合には「給与支払事務所等の廃止届出書」も)を相続開始後1ヶ月以内に提出します。
②消費税
「個人事業者の死亡届書」を速やかに提出します。

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